■ 耐える・・・
一年で一番寒い季節となりました。西日本では記録的な低温のようですが、当方でも、零下5、6度くらいまで下がり、これが「寒さの底」かな、と、この先の緩みを期待しつつ、耐えています。もちろん、畑の野菜たちも。
年末より少しずつ、野菜たちの防寒を進めてきて、もうこれ以上は天にお任せ、という状態で、色々「負傷者」も出てきています。
大根は、ちりちりになった葉っぱを落とし、凍り付いて戻れなかった地際の部分を切り落として、と、まさに美味しいところだけの体裁でのお届けになります。防寒資材をかけてある白菜と違い、鳥(群れで襲いかかるヒヨドリが主)よけのネットだけかけてあるキャベツは、凍害で葉っぱが黒っぽくなるものが出てきました。ネギや人参は、凍りついた地下数センチの下で、命をつないでいます。ホウレンソウや小松菜は、自ら糖分を蓄えて寒さに対抗、冷凍解凍を繰り返して蘇生していますが、死んでしまう葉っぱも増えて、出荷調整が大変です。
とにかく、野菜を収穫できる時間帯が限られるので、夫と息子と3人で手分けして、暗くなる前に出荷場にすべり込むという毎日です。でも、寒さに強い「ちぢみ菜」を収穫していると、葉っぱの間から、ミイラ化したヨトウムシがポロリと落ちたりして、「夏虫や、つわものどもが ゆめのあと」と、とんちんかんな感慨にふけることもあるのでした。
この1月から3月までの出荷のために、ハウスの中での作付けが必要になります。限られた面積に、今収穫中のレタス類に始まり、カブや京菜、春一番の人参や大根、キャベツなどが、ひとうねずつ並んでいます。暖かくなる昼間はハウスも開けて、薄い不織布一枚かけただけですが、夕方はもう一枚重ねてポリのシートで一ウネずつ覆い、3重にして守ります。そうしていても、生き延びるだけで精一杯、この時期はなかなか成長しません。
この先、野菜セットは、変化に乏しいものになっていきますが、どうぞよろしくお願いいたします。
■ 「西の魔女」が来た
『西の魔女が死んだ』(映画の公式サイトはここ)というお話はご存知でしょうか? 2年前映画化もされている、その小説の作者である、梨木香歩さんが、野の扉を訪問してくれました。
梨木さんは、現在雑誌「野生時代」(角川書店)に連載中の『雪と珊瑚』という小説(WEBでの紹介はここ)の執筆のために、農家やレストランを取材されています。「たより」にも何度も登場していただいている東京両国のイタリアレストランの「SIGERUKI」の茂木さんからの紹介で、この厳寒期に編集者と2人で畑を見にいらしたのです。
『雪と珊瑚』というお話は、珊瑚という名の若いシングルマザーが、色々な人の助けを受けながら、自分の店(カフェ)を持つという夢を追いかける、というもの。珊瑚は今はパン屋でアルバイトしていて、料理の上手な「魔女っぽい」人や、新規就農の若い男性なども登場し、食べ物と農業に関係する記述がとても多いのです。ここでは詳細に書く余裕がありませんが、大変刺激をいただいた半日でした。
梨木さんたちとの昼食で、お出しするつもりだったのに、緊張して忘れてしまった料理です。不作の里芋に代わって登場することの多い山芋ですが、細めのものは、皮ごと煮物にしたり、こんな風にソテーに。輪切りにして、多めのオリーブオイル(好みでニンニクも加えて)を入れたフライパンで蒸し焼きして、塩コショウで味付けします。
(1月16日 泰子)