5月13日
原発なんかに殺されるな。
そんなこそこそとした小さなものに
殺されてはいけません。
変わらぬもの、大きな力は
高々と青々とした空のもと、
澄み渡り、堂々と今もあります。
その力は、ためらうことなく
人々を押し潰し、連れ去り、
原発も軽々と打ち壊して行きました。
どんなに憎んでもいい、鬼の形相となっても
原発なんかに殺されてはいけません
これ迄だって耐えてきた
暴風、洪水、干ばつ、豪雪、大波
しかし、どんな時もその大きな力はとぎれることなく
私達は果てしなく生まれ、育くまれて来たのです。
あなたの仇は
あなたや私と同じに小さい力
遠からずこの世界から消し去られるのです。
跡形もなく
5月16日
満月の夜、沖合い遠く波間を漂う私は、
仰向けで夜空を見上げているようだ。
まだ息はあるのかもしれない。
「行ってみよう。」ゆっくりとオールを動かし
ボートを、あなたの横につけ、なるべく静かにゆっくりと観察する
あなたの目にも私の姿は映っているはずだが
反応はまるでない。
私も仰向けになって、同じように空を見上げる
5月28日
見よ。世界はたった一文字で書かれている
その一文字を読み解くことに集中せよ。
限りなく書物を積み上げ、データの蓄積に熱中するのではなく、
この文字を心に刻み感じ続けよ。
青々とした梢を高々と持ち上げた大木が突然燃え上がり、一息で焼け落ちる
私達は濃い霧に包まれている
この赤茶けた霧の一つぶ一つぶは、ただの水滴ではないのだ。
竜巻が縦横に走り回る
悲鳴を上げているのは
ヒトだけではない
ヒトであることを嘆くよりも
その文字にかなうヒトとなるよう心するのだ
5月29日
放射能のいない夜
あれからあなたは
不安気で落着きもない
「放射能が聞こえる。すぐそばにいる」
とあなたは言う
私は
「色々な野菜を作って、香ばしいパンを焼こう」
と言った。
二人は畑を耕し、野菜と小麦の種をまいた。
しばらくすると、あなたはまた
「放射能がじっと見ている。聞き耳をたて、私の肌にふれようとする」
と言う
私は
「ぼく達の時間で、放射能の一つぶ一つぶを消していこう。
君は歌を。僕は楽しい物語を書いてみたい。」
と言って
二人は眠りについた。
今宵はこうして
放射能のいない夜になった。
5月29日
急流を流れ下る落葉の一枚に前ぶれもなく口が開く
おい繁る木の葉の一枚に唐突に口が開く
その口を借りて語りかける者がいる。
と私は思っている。
私達はそうした合図や、兆しを見失うまいと目を凝らすようにしていたが、
そのような出会いがあったかどうだかあやふやだ。
伝えようとした言葉は風のそよぎや木の葉のざわめきがかき消してしまったかもしれない
私達は己の口を使ってそんな言葉をこそ伝えたい。
私の口をそんな役目に使ってほしい
誰かの体を借りて伝えられる言葉を待ちわびながら
私達は流れ下っていく
6月1日
順番は大事
大事なこと程順番が大事な筈
あべこべが世界を壊す。いや、あべこべはまだ正しやすい。
最初にあやまるべき人が、テレビに出てきて、何のことやら「自分の方がうまい」と言った。
大変続きで、他の順番が狂ったのをいいことに、「かき混ぜてしまえ」「混ざっちゃえ」というわけなのだろうか。
どんなデタラメでも覚えておこう
見つけ次第、退場を宣告する
順番は大事。
6月2日
私達は勝利する
私達は減らない 決して
流転していく先がどこであっても
生まれ変わってゆくのだ
彼らは半減していく
いくらかの年月を経て
どんどん減っていく
それが彼らのいまわしさの源なのだから
幾百年、幾千年かかっても
私達は確実に勝利していく