福島の方々は、「静かに怒りを燃やす東北の鬼」(9・19さよなら原発集会での、福島・武藤類子さんの言葉。全文は、ここから読めます。http://bit.ly/nrmfvj)となっています。私も、怒りを燃やす「子鬼」くらいにはならなくては、と、思っています。以下長文ですが、よろしければ最後まで読んでください。
先週、うちの今年の小麦(パン用の「ニシノカオリ」の玄麦)の放射能検査の結果が出ました。
もともと、うちでは、放射能汚染の自主検査はやらない方針でした。それは、行政の仕事だろうと。
原発事故直後の埼玉県の検査で、近くの熊谷市のホウレンソウでは暫定基準値すれすれのヨウ素が検出されましたし、牧草の基準値越えもありましたので、5月には、自分達の野菜や土壌を測ってくれ、と、近隣の仲間と寄居町町議会と町長に要望書を提出しました。
結果は、「独自検査は必要ない、もしくは、やるつもりはない」でした。
埼玉県での小麦の検査結果は、ここにまとまっています。
これが出るまで、近隣の小麦生産農家は、出荷を止められていました。
うちの畑のある、寄居町自体での検査はないので、うちの麦についても、周辺の値=15Bq~31Bq/kgに、近い汚染状況であろうと、推測しました。
その後の経過については、2011/08/04の記事「「菜園たより」8月1週号アップと、セシウムの拡散」
に書きましたが、肥料も、飼料も、土壌改良材も測らなくては移動も使用もできない、という状態になりました。
小麦は、暫定基準値以下だったが、鶏のエサになる「クズ麦」(ふるい下)の検査結果が出ないから、と、今度は、「クズ麦」の流通が止まりました。結局、クズ麦も小麦の汚染に順ずる値だろうという結果が出て、飼料としての流通は行なわれました。
しかし「クズ麦」の検査が終わっても、「フスマ」の検査はいっこうに行なわれません。「フスマ」は、飼料にも肥料にもなりますし、うちでは自家産小麦の製粉で出たフスマを息子の「ノラのパン」(http://bit.ly/nboiTZ 3・11以降、ほとんど更新できていませんが)が食品として加工します。
埼玉県や、ふかや農協に、何回か電話をしました。らちはあきません。
結局、9月13日の農水省の「平成23年産麦に由来するふすま及び麦ぬかの取扱いについて」 http://bit.ly/q7LqHg
というプレスリリースに添付された資料で、「ふすまの放射性セシウムは玄麦の3倍だろう」という記述が出るまで、農協の製粉所から出てくる「ふすま」を移動することもできなかったのです。この資料には、「製粉によって、玄麦のセシウムは、ほぼ半減する」ということも出ていました。
小麦の収穫は6月後半ですが、「枯らす」ために、使い始めるのは、通常秋からです。小麦は、うちでは唯一、事故前から生育していた生産物になりますし、この9月より正式に開業した、息子の「ノラのパン」が、製粉してパンに使う前に、やはり、玄麦の自主検査をしようと決めました。
費用は、1万5000円(税抜き)です。農協に、これは東電に請求できるのか、聞いたところ、暫定基準値に近い汚染のものを調べる場合は、「風評被害」のため、ということで請求できるかもしれないが、すでに県の検査で大幅に下回っているのだから、無理でしょう、という話でした。
ここでは、この「ふざけた」暫定基準値の話には、深入りするつもりはないのですが、この埼玉県の一覧表
に、暫定基準値以下は、「異常なし」と記してあることには、強く抗議したいです。
「異常」はあるのです。どうしてそれを認めないのだろう。だから、検査も何もかも、後手に回って、結局生産者が苦労しているんだから。
また、事故後半年たって、埼玉県での食品への放射能汚染は、お茶を除いては、「検出せず」となっていて、「検出せず」の連発ですが、その測定の検出下限は、20Bq/kgがほとんどであることにも、ひとこと。
近くの仲間と共同出荷している、東京の自然食品店は、「敏感な」消費者に向けて、検出限界1Bq/kgの検査をしている流通から野菜を取っています。ネットで色々情報を得ている方々だと、【知識】不検出の意味を考えよう http://bit.ly/nGTlZf にあるように、「不検出」への疑いをもち、より精密な検査を求めるようになるからでしょう。
ということで、うちの小麦は、検出限界1Bq/kgの検査機関に、依頼しました。結果は、
「ノラのパン」では、玄麦で15Bq/kgのセシウムならば、製粉すれば、半分の7~8Bqになるであろう。フスマは、使わない。という結論に達しました。
ここで、怒りは頂点に達するわけです。
病気が出ないように、自家採取の種を温湯消毒し、
一列ずつ播種機で蒔いて、おんぼろコンバインで収穫して、ハウスに広げて天日干しして、手回しの唐箕でごみを飛ばして、やっと袋詰めして、日の目を見るはずだったのに。
近所のJA製粉所のおじさんと仲良くして、製粉の時に出る「フスマ」ももらって、色々加減して、「ノラのパン」では「全粒粉」としてパンに加工していた、うちの小麦の「フスマ」が、放射能に汚染されたから、使えないのです。無農薬だから、安心して使えて食べてもらえるはずだった、一物全体食なのに。
それは、収量のほぼ4分の一になります。
パンのバリエイションとしても、全粒粉が使えるかどうかは大きいです。香り、色、食感、栄養価、などなど、全体として小麦をパンに使えるかどうかは、大変大きいことなのです。それを、奪われました。
小麦を作ること自体、うちのような、零細農家にとっては、負担が大きく、「道楽」の域に入ることです。それを、新規就農後、20年近く細々と続けてきて、思いがけず、息子が生かしてくれることになったところなのに。
わかっています。もっと、怒りを感じている、生産者がここそこにいることを。
だから、「静かに怒る子鬼」に、なりましょう。「大鬼」の痛み、苦難を想像しましょう。
大地を汚された、民の怒りを、正当に、主張したいと思います。今、より深い被曝を続けている人々への想像と共に。
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