ポジティブリスト制度、何回か耳にしているのですが、自分の中でも、整理できていないので、資料の覚え書きとして、以下に列記しました。
簡単に言うと、「農作物において、一律に0.01ppm以上の非適用農薬を検出した場合には、違反として回収や販売禁止が命じられる。」という制度です。
5月末に施行となりましたが、うちら、小規模無農薬栽培直販農家には、あんまり関係ないと思いますが、生産、流通、輸入、小売といったさまざまなシーンに大きな影響が出ているようです。
海外では、日本への輸出リスクが高まることが、国内では、農薬の飛散(ドリフト)のことが主に語られているようですが、よって立つところによって、さまざまな見解があります。
制度の概要は、たまたま検索でかかったここで。
和歌山県サイトの、エコ農業推進室のページ
http://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/071400/positivelist/positivemain.html
事前の動きは、
日本農業新聞の特集
施行秒読みポジティブリスト
http://www.nougyou-shimbun.ne.jp/special/sp_01/index.html
埼玉の有機農家、ガバレさんがブログで言及されています。
http://kakedasi.269g.net/article/2209564.html
反農薬東京グループは、
「厚労省の残留農薬ポジティブリスト制度では
食の安全は守れない!」という主張をしています。何年も前から、問題点を追及して運動してこられたようです。
「厚労省の提案したポジティブリスト制度では、700を超える農薬等の残留基準が設定されますが、農産物の流通に支障を来さないことに最重点が置かれたため、安全性評価がおざなりになっているだけでなく、残留農薬等の摂取量を減らそうとする方向性が全くみられません。多くの薬剤の基準をつくり、分析管理するという現状には、空恐ろしささえ感じます。
使わなければ残留なしです。消費者も、食品業者も、生産者も、適正使用/飛散防止/使用履歴の記載など生産面での管理に徹すれば、分析などにわずらわされることもありません。」
http://home.e06.itscom.net/chemiweb/ladybugs/jimu/shiryou3.htm
より引用
この制度は、数年前の中国産野菜への残留農薬の事件から、「食の安全」への意識が高まり、農薬の適正使用を図るために制定された、ということになっています。図らずも、早々に、以下の事件が起こったようです。
日本農業新聞(2006-6-9)
「中国産エンドウで 新基準初の違反/ポジティブリスト」
中国では、新制度の元の日本への輸出は「リスク」が高いので、国内の富裕層向けに生産を切り替える、という動きがあるようです。(伝聞につき真偽不明。) 輸入野菜に頼っている外食産業などは、(安価な)食材の確保、という点で、不安があるかもしれません。
もうひとつ、反農薬東京グループとは正反対の立場(だと思う)から、この制度に異議を申し立てている、
「松永和紀のアグリ話」記事一覧
http://biotech.nikkeibp.co.jp/fsn/kiji_mtng_itiran.jsp
から、いろいろ読めます。
最新は、「ポジティブリスト制への疑問7 基準オーバーへの実際の対応は?」(2006-05-31)
http://biotech.nikkeibp.co.jp/fsn/kiji.jsp?kiji=635
以上。
松永さんは最近農薬に関する本を出しています。
踊る「食の安全」―農薬から見える日本の食卓(家の光協会)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4259546937/qid=1149978797/sr=1-3/ref=sr_1_10_3/503-3123345-3722348
こちらも合わせて。
投稿情報: かぜだより | 2006/06/11 07:33
松永さんについてのコメントが、「・・・制度に意義」となっておりました。あわてて「異議」に直しました。
かぜだよりさん、本の紹介ありがとうございました。
内容紹介に、「食の安全・安心への関心が高まり、その危険性ばかりが指摘される農薬。一方、規制が厳しくなる中、使える農薬がほとんどなく、水わさびをはじめとする生産量の少ない「マイナー作物」の生産者は厳しい立場に立たされている。単純な是非論を超えて、持続可能な農業を築き、私たちの大切な食文化を守っていくために知っておきたい、本当の農薬の話。」
とあり、大体、この方のいままでの主張の集大成であることがうかがえます。
まっ、距離を置きたいですね。
消費者を、反農薬運動と反対の方へ、啓蒙したいんでしょうけど。
生産者へのシンパシーというのもあるんでしょうけど。でも、刑事事件にまでなった鳥インフルエンザで不正を働いた巨大養鶏場へのシンパシーの持ち方なんか見ると、なんか違うなあと。
http://blog.drecom.jp/nonotobira/archive/232
に書きましたが。
農薬の安全性について、云々することは、うちらの仕事ではありません。わけのわからないものは使いたくない、という一点でやっているわけで。
いくら、農薬自体が、使用基準を厳守すれば「安全」といっても、使用する人間は、常に間違いを犯しやすいものですし。
彼女の主張には、産業界(農薬会社)の要請、というのがあるんじゃないか、というのは、何の裏づけもない推測です。
登録された「正しい」農薬にするためのコストは大変大きいものでしょうから。
まとまりませんが、この辺で。
投稿情報: とびら | 2006/06/12 05:12