数日前、朝日新聞の朝刊1面の記事案内の中ほどに、「有機農法なのに農薬被害」とありました。
非常に目立つ位置です。記事は、現在ここで読めますが、リンク切れも予想して、最後に★コピーを載せました。
除草剤が残留した輸入牧草を飼料とした牛の牛ふんを用いた堆肥によって、生育障害が起こった、という内容なのですが、
①生育障害が見られた現場は、「有機農業」を行なっていたところなのか。「有機農法」ではなく、「有機肥料を使った農法」ではないのか。
②なぜ、3年も前のことが今、こんなに大きくとり上げられるのか。
という点が、この記事を引用しているブログなど(ここに一覧)でも、ぜんぜん触れられていないのが、気になりました。
ためしに、記事中にある、「畜産草地研究所」をチェックしてみましたが、関連する項目は見つけられませんでした。
今回関連記事を検索していたら、こういうブログの記事もありまして、何かいやな気分になりました。以前「未来の食卓」という映画についての記事で、「オーガニック=安全、安心、おいしい、エコ」みたいな表層的な扱い方への違和感を書きましたが、これは、逆方向の、バッシングですね。朝日の記事も、中立的な装いながら、バッシングに加担しているような気がしました。
で、なぜバッシング、と感じるかにつきましては、日本農業新聞の先月の記事を読んでいたからで。有機農業推進法を受けて、去年から始まっている、総合支援事業のモデル事業部分(約3億円)が、「仕分け」られちゃったんですね。その後、2回、やはり、日本農業新聞の1面に、関連記事が出ました。ほかの、主要新聞には、ほとんど出てないのに。
それで、グーグルのブログ検索で「有機農業推進法」を引いたら、とても詳しい記事に出会いました。
その名も、
「オーガニック・ブログ~サスティナブルなオーガニックの明日を考える」
というのですが、この記事は、一読の価値あります。著者はIFORM(正式名称は今出てきませんが、国際的な有機農業運動の団体)の日本理事のようです。そのような立場から、「仕分け」を批判しているわけです。
あと、小田原の実際のモデル事業に関わっている方のブログ記事も見つけました。
「地場・旬・自給」
のこの記事です。
自分の足は、どこに立っていて、どこに向かいたいのか、考えなくてはなりません。
が、毎日の仕事に追われて、このようなことを考える余裕はなく、今回の記事は、ただただ、得られた情報の羅列になっています。すみません。
★ニュース・クリップ
asahi.com(朝日新聞社):有機農法なのに農薬被害 除草剤、輸入牧草通じ牛堆肥に - サイエンス
国内では使われていない除草剤が輸入牧草を通じて国内の牛の体内に入り、その牛のふんや尿から作った堆肥(たいひ)を使ったトマトやキクが生育障害を起こしていたことを、畜産草地研究所などの研究グループが突き止めた。有機農法や資源利用型農業として利用促進されている堆肥で想定外の汚染が起こる可能性が示された。 グループによると、長野県や愛知県などのトマトやミニトマト、キクの生産農家の一部で2005年ごろから、牛の堆肥を使うと葉がちぢれたり、実が細長くなったりする生育障害が起きることが問題になった。 当初は原因不明だったが、堆肥から日本では使われていない植物ホルモン系の除草剤のクロピラリドが検出され、これで栽培実験すると同様の障害が起きた。また、北米などからの輸入牧草からも微量に検出された。牧草は、干し草が束ねられ輸入される。 クロピラリドは、人間を含め哺乳(ほにゅう)類には無害で欧米などでは使われているが、残留期間が長く、日本では認可されていない。 農林水産省は因果関係が疑われた06年、都道府県に牛の堆肥の大量使用で生育障害の恐れがあることを通知。その後、クロピラリドが含まれる可能性がある堆肥の判定法などの対策マニュアルを作り、畜産草地研究所を通じて今年公開した。 農水省によると、クロピラリドの被害と思われる例は、06年に5県で9件報告されたが、それ以降は確認されていないという。(本多昭彦)
via www.asahi.com
いろんなリンクがあって読むのが大変でした(^^ゞ。
朝日の記事は何を主として伝えたいのかよく分かりませんね。
「嫌な感じ」の記事は本当に嫌な書き方ですが,こういう論調は最近結構ありますね。これを一部の特殊な意見と放置できるのか? 「いい人ばかりのステキな有機農業の世界」に対する反感が渦巻いているんでしょう。議論の内容は稚拙で乱暴ですが,こういう風に考えている人が少なからずいるという事実を我々はもっと重く受け止めるべきだと思っています。
投稿情報: かぜだより | 2009/12/11 21:10
かぜだよりさん、
大変な作業を、病み上がりに押し付けてしまいまして、申し訳ありませんでした。
朝日の記事、事象として、そういうことがあり得る、ということは予想できるわけですが、実際に障害が出た原因に特定できた、というところが、新味なのでしょうか。
もうひとつの「いやな感じ」の記事の、「こういう論調」というのが、ただの「反感」なのか、特定の利害関係者がからんでいるのか、わかりませんが。
「いやな感じ」ではなく、「科学的」に、有機とか無農薬への反感が語られることも多くなっていますしね。
ここだけのはなしですが、
うちが農事の役員をやっている関係で有料配布されている「農業共済新聞」というのの、1面の「ずばり直言」というコラムに、お知り合いのWMさんが、「無農薬をふりかざす(あほう)」とか「欧州では自明となっている、有機農産物の栄養学的な優位性はない、という科学的な事実を、受け止めない日本の有機農業界(への批判)」に言及しておりますね。
また、リンクしているブログの作者、IFORMの理事さんは、らでぃっしゅ、の関係者の様でもあり、こちらも、「特定な利害関係者」と言えなくもなく。
「有機」といったって、うちらのような、多品目少量生産の零細な農家から、少品目大量作付けで生協とか大手流通と付き合っている農家では、ぜんぜん栽培方法が違うんだし。
有機JAS取って、BT剤使って、ネットなんか使わず、畑一面いっぱいキャベツとかブロッコリーとか何でもできちゃうわけだから。
でも、それもあり、だと当然思うわけです。地域としての農村が壊滅したら、取り返しがつかないんですから。
農薬や化学肥料を使うか使わないか、より、大事なことが、あるんですから。
投稿情報: とびら | 2009/12/12 05:59
「危険(リスク)」を回避するために、危険(健康被害など)の原因物質(と思われる物質--主として化学物質)を未然に排除して利用しない方法を「予防原則」と呼んでいます。科学者で言うと、福岡伸一氏、池内了氏などがこの支持者になります。有機農業は、この予防原則に立って、化学物質の使用を排除してきたと言えると思います。
一方、リスクをできるだけ計量的にとらえて、リスクの生じる確率などを推測することによって、リスクがどれくらいあるのか、を判定しようというのが、東大教授中西準子氏の「計量的リスク管理」の手法です(著書があります)。例えば、中国野菜の農薬汚染が一時騒がれましたが、膨大な量の輸入量からすれば、確率的に汚染野菜を摂取する率は1%にも満たないので、ほとんど安心して食べてもいい、というような結論に至ります。
「計量的リスク管理」の信奉者に、元毎日新聞記者の松永和紀(女性)氏がいまして、この視点から、有機農業を強く批判しています。ブログの閲覧は有料なので私は読んではいませんが、他にもだいたい中西準子氏の手法に共感しておられる人たちが有機農業批判を展開しているようです。
「計量的リスク管理」の土俵では議論できませんし、予防原則にも有意義です。
栄養学的な差は、国内ではどちらとも優位という論文があります。イギリスのは「論文の精査」の結果で、研究結果ではありません。
投稿情報: とりのさとZ | 2009/12/13 12:05
とりのさとさん、
大変勉強になるコメントをありがとうございました。
当方、この師走、いつにもまして、脳みそがスポンジ状態で、だだもれ、しております。
「予防原則」と「計量的リスク管理」という2枚の札で、しっかりともれどめしておきます。
最後の3行が、よくわかりませんでした。
栄養学的な差、については、昔、JAS有機認証を取っている頃、登録認定機関の方が、それを明らかにしようとする試みをされて、何軒かの農家からサンプルを集めて検査しましたが、個体差の方が大きくて、実証には至らなかったことがあります。
私的には、この件についてはほとんど興味がありません。
投稿情報: とびら | 2009/12/14 13:50