6月11日
プルトニウムのことを考えよう
人に作られた呪われた子らのことを考えよう
罪もなく、邪悪に生まれた子らのことだ
破壊せねばならない
「成仏」という言葉を思う
百姓は殺す
際限もなく殺す、大方の印象に反して?
成仏の為でもなく、もっぱらそれが己の道だと
自分を納得させながら
ひねり潰す、断ち切る、足で砕く
しかし、彼らは、ただの死者ではない
土を肥やし、命を育み、私達の中にもやって来る
私達の体は、彼ら死者たちの堆積物だ
そう百姓は感じている
だから、常軌を逸している。と伝えられるプルトニウムも
きっと、例外ではない
そんな風に感じている
そうとしか考えられない
ヒトは全力をあげ、「成仏」の方法を
考えねばならない
本当に「閉じ込める」ことが、唯一の解決策なのだろうか?
彼らの帰るべき道はないのか
科学は、きっとそんなことの為にある
科学は「成仏」できない者達に寄りそってあげてほしい
プルトニウムのことを
一緒に考えよう
6月12日
生き物達はみな精一杯感じ取り、目を凝らし、嗅ぎ分け、不測の事態に対応しようとしている
今在ることがどんなに大変でも、予知しようと努めることは大切な営みだ
百姓の目の前には数億、数兆といった数の生き物達が常にいる
その中の一個体が、何か違和を感じ取り、不安にさいなまれれば、動揺は周囲に及び、共鳴する者もいる
そして百姓は気配を大切にする
言葉も大事だが、天気予報も大切だけれども、頼り切ることはできない
年とともに視力などが弱まってゆく時、気配を感じる力は次第に増して、補ってくれるのはありがたい
気配の中には予兆と呼ばれるものも含まれている
神秘的な考えではない
満ち満ちた情報の中に気配を感じ取ることは、誰にでもできること
6月17日
今晩家族揃って口にする
セシウムに砕けた木の実の香りがあり
プルトニウムはクリームのような舌触りだ
想像しようでは、水銀に味はあったか?
カドミウムに香りはあっただろうか?
PCBは?ダイオキシンではどうか?
これ等はみな、知らぬ間に体に入り、生き物を苦しめ
死に至らしめる力を持った物質だ
想像しよう
打ちのめされるためでなく
未来のために
この40年間人々は原発を想像できなかった
少数の人が想像のスイッチを懸命にさがし、見つからなければ作ろうとしてきた
その努力の痕跡は、人々の内に残されていた
福島の事故以降、この痕跡をたどるように回路は少しずつつながり、スイッチは入ろうとしている
災禍を待たなければできなかった想像
しかし、この災禍ゆえに起動した想像力は、新たな災禍の可能性をかならずや粉みじんにする
6月17日
体制派、反体制派などという言葉が近頃よく目に入る
ボロッちい意味のよくわからないレッテルなので
今日からは、もう少しわかりやすく直したいと思う
体制派=反訂正波
反体制派=訂正波
みんなによく覚えてもらい、できれば、しばしば使ってほしい
注目してほしいのは、派を波に変えたところだ
始め、さざ波がそこここに生じ、それはうねりとなり、波となる
固定的な集団を表す、党とか派とは、わけが違うのだ
これですっきりした
分かり易い。と思う
7月11日
日頃泣かぬ者達も泣き
閉じられ泣くことができなかった者達にかわり
強く押しつけられまだ泣くこともできない
同類達の分迄おこれ
決しておこったことがない者達も皆おこれ
ついには、決っしてくつがえされたことがないものをくつがえし
自分の心の中をくつがえし
そうしたら
存分に笑ってしまうだろう
畑で木立の中で
たくさんの、物、者、らと
顔を見合わせては、笑うだろう
皆いっしょに笑うだろう
秋には笑えるだろう
冬迄には笑えるに違いない
来年の春には笑い声がそこここから聞こえてくる
次の夏迄には
かつてのように暮していますように
この春できなかったこと
この夏中おこり
くつがえす
自分の心の中をくつがえす
7月22日
大切な絵、大切な本を汚す者がいれば
ひとはおこります
例え今は目に見えない汚れでも
絵の具や紙を変質させ
やがて全体を台無しにしてしまうかもしれません
今、あなたの目の前に
一冊の本があり
「15頁から16頁の間には
危険がひそむため、開くことができません」
と表示されていたら・・・・
索引には封印される前に読んだ人々の覚え書きと
閉じ合わされる前に誰かが撮った写真とその説明
が記されていれば
足りるでしょうか
福島の村々は
目に見えぬ領域
開くことのできない一頁となって
尊いものを教え
人の過ちをあから様にし
真実を直覚させる
訪れるべき聖地であります
8月1日
初めて開かれたその戸が
二度と開かれませんように
人は敬意をはらい素早く通り抜け
辿り着かなければなりません
その戸が
誰かの傷口だからです
終わり