未消化ながら、この3つ「担い手育成、FTA(二国間自由貿易協定)、有機農業推進法案」というのが、頭の中でぐるぐるしているので、書き出してみました。これに、「外国人研修生問題」が加わると、「日本農業の将来像」「私たちの将来像」が、どんな風に結ばれるのか。
結局、自分たちの足元(何を作って、どうやって売って、誰とつながるのか)が問題なんですが。
担い手育成・品目横断的経営安定対策推進については、
農水省のここ
http://www.maff.go.jp/ninaite/index.html
にまとまっていますが、乱暴にいうと、個人は4ha、集団だと20ha以上の「担い手」に限って、財政支援するというもの。今までは麦とか大豆とか、出荷する農家みんなが本来の販売金額の2倍以上の補助金(小麦の場合)とかを受けてきたのに。
それで、全国の自治体、JAなどがやっきになって、「集落営農」という形で、その条件を満たさない農家をまとめて「担い手」になれるように動いてきたんですが、ここにきて、これまで意欲的に規模拡大をしてきた認定農家が「貸しはがし」されている、ということが報道されました。農水省もメールマガジンhttp://www.maff.go.jp/ninaite/mailmagazine.htmlの最新号で、「集落営農の組織化に際して、これまで地域の担い手として農業経営を行ってきた認定農業者等が、地権者から農地の返還を求められるというケースが見受けられます。」と認めています。
そもそも、この担い手政策は、国際競争力のある強い日本農業をめざして、集中的に財政支援する、ということで出てきたと思うんですが、実際は「船に乗り遅れるな」ということで、集落営農の形での担い手形成が進んでしまったわけです。
自分たちはこういう動きとは無縁で、実際の農村の中での動きはわからないし、当該者の声もほとんど聞こえてこないのですが、日本有機農業研究会の「土と健康」に、山形の星寛治さんが、「この新農政で、日本の家族農業、日本の農村、国土や地域環境も全面的に崩壊して、やがて、多国籍企業の餌食となる。」という文章を寄せていました。
逆に、日豪FTAについては、生産現場より、農水省が大変危機感を持っているようです。
http://www.maff.go.jp/www/press/2006/20061201press_5.pdf
直接的には、小麦、砂糖、乳製品、牛肉で約8000億円の生産減少が予想され、地方の関連産業も打撃を受け、耕作放棄地も増えて、環境保全にも悪影響。
これを免れるためには、農家向けだけでも新たに4000億円以上の財政負担が必要で、精製加工業の方にも援助が必要で、それでも、供給過剰で国産品の需要を保つことは困難だ、とのこと。
アメリカとのFTAの進展に対して、韓国では激しい反対運動が起きています。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061123-00000001-yonh-kr
日本では、まだ、全中(全国農業協同組合中央会)の代表の反対集会があったばかり。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061201-04870469-jijp-bus_all.view-001
どんなに、「担い手」を作ろうが、「外圧」には勝てない、という日本農業の絶望的な景色が見えてくるのですが。
星さんが、前記の文の中で期待を寄せている、有機農業推進法案については、
私が購読しているメルマガ「有機農業ニュースクリップ」に全文が載っていたので、コピーして、ファイルにしました。今国会で審議されて、成立するということなのですが。
yuukisuisinnhouann.htmlをダウンロード
この「有機農業ニュースクリップ」の筆者は、
「化学肥料・化学農薬・遺伝子組み換えを必ずしも全面的に否定はしていないから、有機JASの認証を取っていない昔からの有機生産者や若い新規就農者が泣きを見て、新たな儲け口と参入してきた遺伝子組み換えも容認するような「認定有機農業者」がおいしいところをさらっていく」のではないか、
「小規模な家族農業による有機農業は、推進法の枠外におかれる可能性が高くなってきた。」と言っています。
だから、この三題話は、ぐるぐるまわって、小さいものからやや大きなものまで、日本から農家をふるい落としていく、「フルイ」なわけです。
ふるわれないようにするには、どうするのか。やっぱり、自分たちの流通と関係性を共同で探っていくしかないんでしょうねえ。言うは易く・・・・
それに加えて、やっぱり、農協出荷にも公的な財政支援にも無縁な、うちも、この地域の農業が崩壊していくと、営農できなくなるわけで。畑で大量に使う麦ワラ、鶏のエサにしている米ぬか・オカラ、敷き料のモミガラ、など、地域の有機資源の有効活用、というのが、有機農業の本来の姿なんだし。だから、「日本農業」もふるわれないようにしてもらわなくちゃなんです。
今度の月曜に4日に小川町の金子さんのとこに農家と国会議員が集まって議員に生産者の声を聞いてもらう会議がありますが、扉さんは参加されますか?
僕も月は出荷ですが午前中に切り上げて駆けつける予定です。
投稿情報: あさひや | 2006/12/02 17:00
あさひやさん、コメントありがとうございます。
さすが、「日本有機農業の父」金子美登さんです。そして、小川町有機農業グループです。卒業生まで含めて、こんな会議を持てる求心力に、敬意を表します。
うちは、声もかけられていないし、私は田下さんは存じ上げていますが、金子さんとは面識もありません。参加はできません。
どんな内容だったか、ブログなどでお伝えいただけるとうれしいです。既に、国会の審議予定に入っていると、聞いていましたが、この会議の成果がどのように反映されるのでしょう。可決した後の現実の施策面での要請になるのでしょうか。
投稿情報: とびら | 2006/12/03 05:13
おはようございます。
推進法案は基本法なので、自治体や国(農水省)がどのような施策をするのか、まではまだ明かではないものの、私とは関係がないような気がします。
国や自治体と、私のような小規模零細有機農家との「接点」がありません。やはり、JAのように、全国生産者団体を構成するのが必要になるかも。
しかし、この段階で早くも「農水省と喧嘩腰」になるのもどうでしょうね。今までの経緯はあるけれどもね。
投稿情報: とりのさとZ | 2006/12/03 05:48
とりのさとさん、
全然「けんか腰」のつもりはないのですが。
「JAのように、全国生産者団体を構成するのが必要」というのは、ずい分大きな課題ですね。判断停止状態です。よくわかりません。
この三題話、自分たちとは「関係ない」といえばいえないこともない話ではありますが、やはり動向だけは見ていこうと思っています。
とりのさとさんの方の、スーパーとの取引に絡んで、JAS有機認証を取るとらない、という話はどうなりましたか?
投稿情報: とびら | 2006/12/03 13:40
こんにちは。
「喧嘩腰」というのは、とびらさんのことを言っているのではないんですが、そういう人って、有機農業関係にいませんか。
「生産者団体」というのは、大きな風呂敷かもしれませんが、個々の零細有機農家と国や自治体が対峙することは現実的ではないですね。
「有機農研」には消費者・学者も参加されていますから、生産者団体とまでは言えないと思います。
JAS有機ですが、今調べているところなんですが、
有機農業推進協議会:1ha未満で経費年7万円、他に検査員の交通費または宿泊費も。
愛農会(三重県)、年3万円。ただし、初年度の講習1泊2日。その費用3万5千円くらい。
この費用を払っても、それ以上の利益を出すには、大雑把に計算して、月に3万円以上の(店頭での)売り上げがほしいところで、これなら、毎週(土日で)7000円以上。150円単位セット50! こちらではむつかしいかなぁ、という印象です。
補充や配達の手間を考えると、ちょっと踏み切れません。
野菜セットを細々でも続ける方が、まだ採算が合うようです。
投稿情報: とりのさとZ | 2006/12/03 18:25
JAS有機認証に関しては、ご存知でしょうが、認証機関に払う費用より、書類作成記入の手間の方が、甚大です。
畑が小さくわかれ、作付けも細かいと、何がなんだか、いやになってしまいます。販売実績もきっちり記録しなければならないし。
全部をシールつきで販売するのでなければ、「合わない」と思います。月3万売り上げじゃ、全然合わないと思います。
投稿情報: とびら | 2006/12/04 05:53
書類作成はアバウトに書くことはできないんでしょうかねぇ。
「消費者リポート」には魚住道郎さんが「提携関係は飽和状態にあり、新規就農者が有機農業を進めるためにはJAS有機や生協との連携、JAの直売所利用なども必要だろう」と。
生産者が流通(団体)を拡大する視点が、まだないんだなぁ。
長くつきあってきた消費者グループの経営が、もう行き詰まってきて、あと数年でダメみたいなんで、ちょっと気分的に用意しているだけです。
投稿情報: とりのさとZ | 2006/12/05 17:21
「まだない」のではなく、「もう、ない」なのでは。「行き詰まり」でしょう。
魚住さんの言葉は、10年前、5年前でもおかしくはないでしょう。そんなことなら、JAS有機を鬼っ子扱いしないで、零細有機農家が取得しやすいように、本気で議論すればよかったのに。と、有機農研の内部事情は知らないまま、思ってしまいます。
生協に納品できるような、大きなロットで作っていたら、多品種栽培なんて、できないんじゃないですか。その地で作れるものはみんな作って畑丸ごと「セット」で付き合ってもらう、という作付けと、両立できるとは思えませんね。
だから、「提携」とか「個別の定期購入客」の売り上げの減少を、皆さんもやっておられるように、小さな「違いのわかる」流通とか、外食系、で、カバーするしかないのでは。
普通の直売所なんて、とっくに飽和状態だし。新規の人の販路確保は、本当に厳しいと思います。なにか、共同性がないと。でなければ、卓越した経営能力、営業力がないと。
投稿情報: とびら | 2006/12/06 05:04
これから始める人にJAS取った方がいいよとは到底言えません。
日本では(広義での)有機農産物はマーケットで「消費者にとっての安全食品」という意味に矮小化されています。その範疇にある限り,流通経路に関わらず,市場は拡大しないし,十分なプレミアムを得る事も無理です。「JAS通ればいい」的なグレードの低い有機農産物がマーケットに供給されればその傾向はますます強まります。
ゲリラ的に売って行って,ダメだったらあきらめる覚悟がなければ有機農業なんかやるな,というのが正しいアドバイスかと。こういうこと言うと嫌われますが(笑),無責任に勧めるよりよっぽど親切かと。
投稿情報: かぜだより | 2006/12/06 08:05
「JAS通ればいい」的なグレードの低い有機農産物、ってどこにでているんでしょうか?
有機農産物のマーケットは拡大しているのかいないのか、よくわかりません。
長野のあさひやさんが視察して言うには、千葉など、大変でかくたくさんの方が有機農業やっているようですし、小川町(ここは認証なしだと思いますが)は、最近取引量が急増しているとか。
茨城の八郷も、有機の生産者多いですようね。有機分野でもJAが強いみたいだし。
「ゲリラ的」か、何人かで組んで大き目のロットでやるか、どっちにしても、よいものを作らなくちゃですよね。
投稿情報: とびら | 2006/12/06 13:59
愛媛の無茶々園などは、有機生産者集団ですし、愛知の渥美半島には「天恵グループ」というのがあります。地域でのグループ化もひとつの道でしょう。集団認証というのもありますから。これなら、ある程度のロットでの出荷も可能になるでしょうが、「事務局」のようなコアになる作業者が必要になりますよ。これを流通経費として内部で負担できるかどうか、ですが。
有機農研が過去に新規就農者に(販売の)道筋を作ったことはないのでは。
投稿情報: とりのさとZ | 2006/12/06 17:17
具体的にどこかの団体を指して言った訳ではありません。ただとりのさとさんが書かれているような地域グループ化でJAS有機集団を形成した場合,当然ながら上手な人もヘタな人もいるわけで。モノの質が落ちることは避けられないと思います。それでもちゃんとした事務局を置けば「書類上」通すことなどはっきり言って簡単だと思います。生産者には「これとこれ使ってね。これはダメよ。」とだけ言っとけばいいわけですし。僕はこれを「目的としての有機農業」と呼んでいます。いい物をつくるための「手段としての有機農業」との差は大きいです。
別に大規模化が悪いとか言っているわけではなくて,そういう物が市場にあふれると,ますます「有機農産物」の優位性がなくなり,結果としてマーケットが広がらないんじゃないの?という疑問です。「慣行物の1割高」あたりの減農薬マーケットレベルをねらったビジネスで小さいパイを食い合い,いずれは輸入オーガニックに食い散らかされて終わりだと思いますが。それでは物のグレードも低く,かつ商売としてもヘタ,という事ではないでしょうか。
投稿情報: かぜだより | 2006/12/07 08:20
お二人とも、いろいろと書き込みありがとうございます。
有機農業推進法案が、参議院で可決(全員一致)したようで、
かぜだよりさんの言う「目的としての有機農業」を、国を挙げて支援していくことになるのか、どうなのか。
「「慣行物の1割高」あたりの減農薬マーケットレベルをねらったビジネスで小さいパイを食い合い,いずれは輸入オーガニックに食い散らかされて終わり」という恐ろしい(というか滑稽というか)未来像が、実現するのか、どうなのか。
何を求めている人とつながるのか、よく考えて進まないと、体力のない自分たちは、つぶれちゃいますね。
投稿情報: とびら | 2006/12/07 13:53
「日豪EPAの交渉入りに当たって」という農林水産大臣談話が15日付で出ました。
メモとして、この記事にくっつけておきます。
http://www.maff.go.jp/www/press/2006/20061215press_5b.pdf
「EPAにより、一律に関税撤廃が行われれば、現在、全国規模で懸命に進められている農林水産業の構造改革の努力は水泡に帰し、農林水産業その関連産業、更には、地域経済を崩壊に導くのみならず、農林水産業を通じて形づくられている美しい田園や我が国の伝統文化も失われてしまうことになりかねない」
EPAは経済連携協定。FTAは自由貿易協定。
投稿情報: とびら | 2006/12/17 06:40