菜園 「野の扉」

~ 1993年の開園以来、埼玉県寄居町で、農薬と化学肥料を一切使わず 野菜を作っている、新規就農の百姓です。

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3月10日から~その2(6月2日まで)~晃

5月13日

原発なんかに殺されるな。

そんなこそこそとした小さなものに

殺されてはいけません。

変わらぬもの、大きな力は

高々と青々とした空のもと、

澄み渡り、堂々と今もあります。

その力は、ためらうことなく

人々を押し潰し、連れ去り、

原発も軽々と打ち壊して行きました。

どんなに憎んでもいい、鬼の形相となっても

原発なんかに殺されてはいけません

これ迄だって耐えてきた

暴風、洪水、干ばつ、豪雪、大波

しかし、どんな時もその大きな力はとぎれることなく

私達は果てしなく生まれ、育くまれて来たのです。

あなたの仇は

あなたや私と同じに小さい力

遠からずこの世界から消し去られるのです。

跡形もなく



5月16日

満月の夜、沖合い遠く波間を漂う私は、

仰向けで夜空を見上げているようだ。

まだ息はあるのかもしれない。

「行ってみよう。」ゆっくりとオールを動かし

ボートを、あなたの横につけ、なるべく静かにゆっくりと観察する

あなたの目にも私の姿は映っているはずだが

反応はまるでない。

私も仰向けになって、同じように空を見上げる

 


5月28日

見よ。世界はたった一文字で書かれている

その一文字を読み解くことに集中せよ。

限りなく書物を積み上げ、データの蓄積に熱中するのではなく、

この文字を心に刻み感じ続けよ。

青々とした梢を高々と持ち上げた大木が突然燃え上がり、一息で焼け落ちる

私達は濃い霧に包まれている

この赤茶けた霧の一つぶ一つぶは、ただの水滴ではないのだ。

竜巻が縦横に走り回る

悲鳴を上げているのは

ヒトだけではない

ヒトであることを嘆くよりも

その文字にかなうヒトとなるよう心するのだ



5月29日

放射能のいない夜

あれからあなたは

不安気で落着きもない

「放射能が聞こえる。すぐそばにいる」

とあなたは言う

私は

「色々な野菜を作って、香ばしいパンを焼こう」

と言った。

二人は畑を耕し、野菜と小麦の種をまいた。

しばらくすると、あなたはまた

「放射能がじっと見ている。聞き耳をたて、私の肌にふれようとする」

と言う

私は

「ぼく達の時間で、放射能の一つぶ一つぶを消していこう。

君は歌を。僕は楽しい物語を書いてみたい。」

と言って

二人は眠りについた。

今宵はこうして

放射能のいない夜になった。



5月29日

急流を流れ下る落葉の一枚に前ぶれもなく口が開く

おい繁る木の葉の一枚に唐突に口が開く

その口を借りて語りかける者がいる。

と私は思っている。

私達はそうした合図や、兆しを見失うまいと目を凝らすようにしていたが、

そのような出会いがあったかどうだかあやふやだ。

伝えようとした言葉は風のそよぎや木の葉のざわめきがかき消してしまったかもしれない

私達は己の口を使ってそんな言葉をこそ伝えたい。

私の口をそんな役目に使ってほしい

誰かの体を借りて伝えられる言葉を待ちわびながら

私達は流れ下っていく



6月1日

順番は大事

大事なこと程順番が大事な筈

あべこべが世界を壊す。いや、あべこべはまだ正しやすい。

最初にあやまるべき人が、テレビに出てきて、何のことやら「自分の方がうまい」と言った。

大変続きで、他の順番が狂ったのをいいことに、「かき混ぜてしまえ」「混ざっちゃえ」というわけなのだろうか。

どんなデタラメでも覚えておこう

見つけ次第、退場を宣告する

順番は大事。

 



6月2日

私達は勝利する

私達は減らない 決して

流転していく先がどこであっても

生まれ変わってゆくのだ

彼らは半減していく

いくらかの年月を経て

どんどん減っていく

それが彼らのいまわしさの源なのだから

幾百年、幾千年かかっても

私達は確実に勝利していく


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投稿情報: 2011/06/03 | 個別ページ | トラックバック (0)

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3月10日から~その1(5月6日まで)~晃


3月10日

ほころび、春の訪れを告げた筈の梅がもう一度いっそうみすぼらしい冬枯れ状態に戻ったように見えます。春はとんとんと進まず、梅が桜でない道理を納得します。

「はい、さようなら」と行かず、ボロ着となっても、なお子実を守るのも美学か。

化石燃料バブルの終盤を生きる我々は、ご先祖様のエキスをすするようなものか。

どんな実を結ぶつもりか。

たぶん人間バブルの終末を生きながら。



3月14日

海の向こうではない、この地べたの先に食べ物を送り届けるのだ。

今までも、そして今こそ、百姓は底力だということを自覚しよう。

食べ物作りに没頭しよう。



3月19日

風物に杉の花粉が万遍なくまぶされ、そこにはいくらかの放射能もまじるという。

そして本当の春がようやくやって来る。

桜や多くの花が休むことなく咲き、散っていくのだろう。

景色のそこここに花びらが撒き散らされ、たぶんどの花ビラにも、いくらかの放射能が付着していくのだろう。



3月23日

気象も含め、森羅万象、お天道様が決めることだから、

人類の生き死ににも、きょう播いた菜っ葉の種の行く末も、

不確かだ。

でも、今私達は、お天道様の生き死にも、ちっぽけに思える大きな摂理、

律動の渦中にあることを知っている。


3月24日

約束の春は履行されず、天地今だ定まらず、

そんな中、人の心も落ち着いていられない。

天地創造を逆行するような3月である。

人が近づけたくないもの、見たくないものは、警告を発し、

人のありのままの姿を、輪かくを際立たせることで鮮明にする。

何ごとにも涯(はて)はある。

人の命も、自由も、夢もそこ迄である。

そこから先は、混沌が涯しなく広がっている。

我々のゆりかご、墓所である。



3月28日

原発から発する霧と、皆の喧騒とて、互いの顔も見えず、声も届きにくい中、

不安や怖れとが、霧をいっそう深めています。

自分の身を守るのに精一杯で、無分別になっている人もいます。

霧の中、深々と呼吸をして、百姓は、静かな定点となります。

私達を測ってみて下さい。




4月3日

日常が覆り、美しいもの大切なものも多く失われた。

失われた命は戻って来ないが、残された命がある限り、時間はかかっても、かつての風景と生活は蘇る。

それは必ずはたされる約束された希望だ。

ただ悪しき遺物には、金輪際出て行ってもらわなければならない。

それは疲へいした人々を、むしばみ、甦りを妨げる重石となる。


4月15日

3月11日以降、この世は、あの世となりました。

地獄でもなくまして天国でもなく。

歩みをピタリと止めていた季節の移ろいも、ひと月を経て疾走を始めた。

でも、春は見合わされ、そうでなければ、素通りされたようです。

桜花と雑木林の芽吹きは同時にやって来て、霞に煙る里山の、今日の美しさは、千年に一度のものかもしれない。

思い起こせば、天国も地獄も又、この世のものでありました。


4月16日

百姓は季節を刻む、時計の役割を担う。

天地が多少乱れても、翻弄されることがあっても、種を播き、苗を植える。

幸い未来のことは不確実だ。可能性はいつだってあるのだ。

私達は、種や苗の力も、把握しきれていないし、

物事の流れには、上流も下流もなく、去ったものも、

かならず帰ってくるのだ。



5月6日

とば口にいる、私が言うのも何ですが、田舎だって奥が深いのです。

二千年かけて培った知恵もあります。数十年の変化を経ただけで、判断を下せる代物ではないのです。

しかし、手をこまねいていれば、あと数年で、広大な、田舎の情報遺産もほとんど失われてしまうでしょう。

この国に、知恵と力を、慈悲深さをもって惜し気なく与えてくれた地方に、少しでもお返ししなければなりません。

彼らが力を取り戻す迄ささえ続けることで、奪い続けたものを、返すのです。


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投稿情報: 2011/06/02 | 個別ページ | トラックバック (0)

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「菜園たより」2011年6月1週号

Kari20110528 ◆久々の満水

よく降りました。5月としては、各地で24時間降水量と72時間降水量が観測史上1位を更新したようですが、ここ寄居町も。

年明けから乾き基調でしたので、たっぷりと水を湛えて、ずぶずぶの畑で足を取られて難儀しても、まあ、いいかな、と思えます。

すでに、昨年超大発生して苦しめられたヨトウムシが、ネットの中の小松菜をかじっておりますので、この雨で、目に見えない生まれたての幼虫達が溺れ死んだかな、と、これも、しめしめという感じです。

 
記録的に早い、という、先週の梅雨入り宣言でしたが、低温と日照不足で、遅れている野菜たちの生育が、またまた遅れ続ける予感もします。セット野菜では、今年は、エンドウ類が不作、ブロッコリーやカリフラワーも低温のせいか不調です。キャベツやレタス類は、ほぼ順調に続いていましたが、これからは過湿による病害が心配です。

早く、力強い夏野菜たちが登場してくれることを願って。(写真は、カリフラワー。微妙に、「異常花蕾」っぽいですが、きれいです。)

◆ツバメの復興

10日ほど前に、東北の石巻に炊き出しボランティアに出かけた、近所のグループ(研修先の「皆農塾」)の報告会がありました。(詳しくは、こちらの「畑ごよみ」にあります)

2ヶ月経っても、被災地では、想像以上に、厳しい状況が続いているようです。生活の再建に向けて、少しずつでも進みますようにと、祈ることしかできません。

うちでは、今、ツバメが頑張っています。去年一昨年は、無事にヒナが巣立った、うちの玄関にあるツバメの巣。今年は乾燥していて補修がうまく行かなかったからか、子育て中に巣が壊れて、ヒナはみんな死んでしまいました。でも、同じカップルなのか別なのか、わかりませんが、すぐに巣の再建を始めました。ずうっとはらはらしたり、激をとばしておりますが、間に合うでしょうか・・・

 
◆町への要望の件

さて、5月17日に、寄居町長と町議会議長あてに、「町内の土壌及び農産物への放射能汚染実態調査を早急に行なっていただきたい」という要望書及び陳情書を連名で出したことはお伝えしました。

少数であっても、町を動かし、そのいくつかの町が県を突き上げることで、事態は少し動くのだと思います。

23日に、埼玉県は、県内約100カ所の校庭や園庭で大気中放射線量を測定し結果を公表する(これまでは、さいたま市のビルの上の1カ所だけ)、自前の測定体制もほぼ2倍にする、と発表しました。初動の大きな遅れは否めませんが、県知事の言うように、「長期戦」が始まりました。(県知事の記者会見の内容は、こちら)

(6月1日 泰子)

 

投稿情報: 2011/06/02 カテゴリー: 菜園たより(隔週発行) | 個別ページ | トラックバック (0)

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遺伝子組換え農産物の栽培は認めない

「遺伝子組換えセイヨウナタネ、トウモロコシ及びワタの第一種使用等に関する承認に先立っての意見・情報の募集」 というものが、平成23年5月23日農林水産省消費・安全局より出されています。

★農水省のパブリックコメント募集のページは、ここにあります。

★この案件についての詳細は、総務省のイーガブのこのページにあります。

後者の中の「意見公募要領」によれば、この「第一種使用」というのは、「一般ほ場での栽培など環境中への拡散を防止せずに栽培等を行う場合」ということです。

農水省は、「生物多様性影響が生ずるおそれはないと判断」し、このままでは、遺伝子組換え作物が、普通に、日本の農地で、何の拡散防止措置をされずに、栽培されることになります。

私は、これに対して、本日、以下のような意見を提出しました。

 

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 今回の構図は、原発が推進された時と同じです。

反対する科学者が警鐘を鳴らす中、密室で結論が出されようとしています。

国民全員が、将来遺伝子組換え作物に取り囲まれ、否応なく隣り合わせの生活を強いられ、影響を簡単に排除できない可能性があるのに。

それについて、よく考え、一人一人が答えを表明する機会もないまま、知らされもせず、置き去りにされています。

人智は浅はかで、目先の利益のために、視野は狭くなり、悪い可能性をすべてを検証する力も失ってしまいます。

遺伝子組換え作物の普及販売を目的とする営利企業は、今後、少なくとも百年に亘る、一つとしてもれることのない、実証研究をするべきです。それを全ての人に細大もらさず明らかにしたなら、すべての人が自分の考えを持てるようになる時を待ち、公明正大な選挙で、意志を表示する場を持てばいいでしょう。

国民は、急いで、この重大な結論を出す必要性をまったく感じていません。


以上

伊藤 晃

 


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投稿情報: 2011/05/31 | 個別ページ | トラックバック (0)

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「野良で考えたこと~福島原発事故以来」

伊藤 晃

 

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私がここに書き記すことは、すでに誰かによって語られたことかもしれないし、その焼き直しかもしれません。ありそうなこととして、古くて狭く浅い思考なのかもしれません。私は、ネットとか携帯電話とはほぼ切り離されている為、古いメディアに頼り、野良で考えたことばかりだからです。考慮するに値しないないようであれば、素通りしてください。一読してもらえたなら、誤りや不足を痛烈に批判されたいと思います。

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◆始めに

 
大震災が引き金をひいた原発事故によって、海と大地と大気が汚染され、それらを共有する地球上のすべての人、生物が、程度は違っても同じ被災者となりました。

 
しかし、私はこの国の大人として、「起災者」としての責任を負っています。


地震の只中に、津波の前面に、原発を置いたのも、

そこで得られた電力を使い、原発推進を「国策」とする政府を選んだのも、私達でした。「国策」を支持し、あるいは放置し、撤回させなかったのは、私達だったということです。


政府はもちろん、私達も世界に向かって詫びなければなりません。


これは、原発の是非を問う前の前提です。

 


◆「国策」とは何か

 
福島に原発が建設されたのは、40年前、私が小学生の時です。

そのころ「公害」が全国各地で深刻な事態を引き起こし、発覚し始めていました。

営利活動は目先にとらわれ、モラルはついてこなかったのです。

人間の都合が最優先され、「改造」は、身の回り至る所で、色々なものを押し潰し、埋め立て、展開していきました。

 

福島原発の稼動から10年程して、私は初めて原発と出会いました。

同時に「国策」とも。


公害の街で、その渦中育った私は、「成長」、「発展」に懐疑的でしたし、巨大技術、「原子力の平和利用」など信じられませんでした。

都市の無責任な住人であった私は、小さいけれど懸命の反原発運動のさ中、「原発はいりません。」の一点張りだったけれども、仙台で、女川で、柏崎で、機動隊に取り囲まれました。


原発は、「国策」でした。


しかし、今日に至るまで、郵政選挙というのはあったけれど、原発選挙などありませんでしたし、是非を問う国民投票など一度も行なわれてはいません。

為政者の話として、現都知事の「原発をもって核武装しろ」とか、元首相の「原発がなければ、日本は四等国」、という発言が目についただけです。


経緯が判然とせぬまま、既成事実が積み上げられ「国策」は成りました。

スリーマイル島、チェルノブイリで破滅的な事故が起こりました。日本国内においても、中小(?)の事故は日常茶飯でした。


しかし、政府、電力会社は、原発のイメージアップをエスカレートさせ、今日に至ったのです。



◆理不尽極まる

稼ぎ手、担い手を、中央へ送り出し、人をつなぎとめる金もない、老い先が知れた田舎町が、とっておきの財産を差し出す見返りに、原発も、お金もやってきます。

心細さにつけ込み、足元を見られ、原発立地の話はやって来るのです。


誘致とは、為政者側の言い分です。誘致は、誘導されて、最後は力づくでなされてきたのです。

電力は、地域の魂が、姿を変えたもののように流れ出し、都市の人々を助けてくれました。

枯渇へ向かう村があって、蕩尽へ向かう街とがあったのです。

理不尽は、50年前からありました。それは城を成し、共存共栄を装い、大洋の前に象徴的に建っていました。


3月11日以降、理不尽の象徴は、瓦解し、爆発し、人々の上に、間に、内部にまで襲いかかりました。

初めは、目に見えぬ形で、広く東日本一帯にほんの数日で到達しました。
そして、理不尽は、目の前にくっきりと現れました。それは、人畜が消え、廃墟となった村々です。


◆理不尽はまだ続く


震災で傷ついた人々は、放射能からの逃げ足も失っていました。車を失い、情報も失い、一切を失い、徒歩で避難した人も多いようです。

根ざしていた風土、共に生きていた生き物達を置き去りにして、不明のままの家族、親しい人達を残し、遠く去ることができない人もいたでしょう。
そのさ中、中央では、被災地から遠く離れた人達が、新幹線で、車で、はるか遠方へ、避難していきました。

畳みかける、理不尽のただ中に、とり残され、留まる人々は、避難所で暮らす人達は、虚脱感、無力感と向き合わされたでしょう。


彼の地には、かつての、そして未来のこの国の景観が多く残されています。

しかし、「美しい国を守る」と言うような人達が、世界をいじくり、風景を作り変え、景観を黙々と守る人々に理不尽をしい、追いつめてきたのです。


生まれ育ったその土地で暮すことが全てである人達、

そのような人達を、引きはがし、「退避」させることで、何かを守れるという考えは、見当違いです。


「原発事故で直接的には一人の死者も出ていない」というのも、まやかしです。

すでに多くの人が命を絶たれました。去る者も、残る者も解体されたのです。


はびこる夏草を押し返し、厳しさを増す気象や、すきあらば作物を台無しにしてしまう外敵に対応できたとして、この上感知できぬ「悪」、放射能を、新しい器官で見張るなどということが、この先できるでしょうか?



◆「国策」を前にして

 
これまで「国策」を支えてきた、二通りの人々のことを考えてみます。(極端かもしれませんが、代表的な人々です)


市民と呼ばれる人々の中の保守層と、もう一方は農業者達です。


前者は主に経済的理由から、自民党長期政権をささえ、「国策」を支持してきました。経済的格差は、常態化し、広がっていくばかりでしたが、彼らは比較的、自由や快適さを得ていた人々です。関心事は、安く、安心で、安全であることでしょうか。国内では、多数派だと思います。


「国策」の誤りのツケを払うのは御免だ、というスタンスで、政治家にリーダーシップを求めるが、結果に満足できねば、たたく、という風でしょう。

農業者は今では国内少数派ですし、有史以来「国策」におびやかされ縛られる生活が続いてきました。(食管制度であり、減反制度です)

それは、農業が国家の根幹、生命線だったからです。

しかし、収入も少なく、管理され、不自由な仕事として、すたれていきました。

今では、国家に保護される立場にあります。

「お上」に逆らわない、長いものには巻かれろ、といった具合に、最も積極的に、自民党政権に加担し、見返りを要求してきた、「国策」には従うのが当たり前の人々です。


市民の中には、「農業は税金の無駄使い」と言ってのける者もいたし、「起業家精神が足りない、農業も輸出産業になれる」とそそのかす者もいました。


しかし高齢化ばかりが原因ではなく、食べ物が、命を命へとつなげるものだと思うほどに、農業者のブレーキはかかります。

理解されぬ弱者=農業者は、ますます政権にすり寄っていったかもしれません。



◆何度でも投票を

 
生活者の原発に対する態度には、二通りあります。(中間的な態度も可能ですが)

増設を求める人と、停止を求める人がいて、両者のへだたりは、大変大きいです。容易に越えられぬ溝があります。


大局は、二分された状況にあっても、各地の原発一基一基については、議論の余地があります。


今回の事故によって、問題が素早く広く、国民全体に提起され、議論される必要は、確認されたでしょう。

原発一基に事故が起これば、国土の大半が被災するのですから。


また、原発が、国の在り方と深く関わっていると人々に認知された今、多くの人がその是非を問う国民投票を望んでいます。

そして、その結果が人々の間に分断を招くに終わるのを防ぐためにも、1回限りではない、定期的な投票が望まれます。


国の在り方を決める投票なのだから、人々は何度でも問い直し、敗れた者も、次回に向け、希望をつなぐことができます。


私たちは、成熟した、自分達の国家を持ったことがありません。

自分達の「国策」を持ったこともありません。


私達にとり、重大なこと、政治家達の間で意見の分かれることは、国民が、直接決める方法を持たなければいけません。

誰かに任せてしまえば、巻き込まれてしまうのですから。


◆「飢える」ことを想像する

 
「この国の人は、己の傷の深さ、大きさに、気づいていないのではないか?」

そう思えてなりません。


被災者の救済に全力を挙げながらも、「世界の中に、深手を負って在る」そんな事実をもっと自覚しなければならないのではないでしょうか?


国が破れかかっている時に、山河は、人々をこれから先も蝕もうとしているのかもしれません。綱渡りで生き抜かなければならないのではないでしょうか?
この国は、そう遠からず、様々なライフライン(情報を含め)を維持できなくなるかもしれません。

それでも、食いつなぎ、生き延びることを考えておかなければならないのではないでしょうか?


近年、世界の食糧の需給のバランスは逼迫し、それは、もう肌で感じとれるものとなりましたが、いまだに、この国では、食料自給率のことを言ってもむなしい状況でありました。


この国が、経済的に豊かで、世界に飢える国があっても、食料は「お金で買える。」という思い込みが支配的であったからです。


しかし、自給の為の人的基盤は過去数十年で大きく失われ、今また、震災と原発事故で、実質的基盤も手ひどく痛めつけられました。


本当に、この国にはまだ、食糧を買い集めるお金があるのでしょうか。


まだあるとすれば、それは、今すぐ支払われるべき、震災復興の準備金、原発被災者への賠償金のことなのではないでしょうか。


この国が破産せぬことを、願っています。

世界から破産国の烙印を押されぬことを願っています。


世界各地でひん発する、凶作、を思えば、この国の人々が難民となって海を渡らねばならない苦難も想像しなくてはなりません。



◆作り続け、食べ続ける

この国の、現在の目に見えぬ姿を明らかにしなければならないでしょう。


本来なら、いち早く国が取り掛かるべきだった放射能汚染の実態調査、一部の志ある学者達の仕事を、国は、県は、積極的にサポートし、早く、その地図を作り上げてほしいです。


地図を元に、線は引かれることになります。


東日本の汚染された広大な土地を、風評のままに放置すると、それらの土地は死んでしまいます。


この国は、早晩立ちゆかなくなります。


線引きされた地域外にも危険が潜在していることを承知の上で、生産者を支え、生産地帯を維持する為に、その生産物を、年齢に応じ、食べ続ける必要があるのではないでしょうか?


それは、人ゆえに放射能に汚染された、すべての生き物と、痛みを分かちあうことになります。


他に方法があるでしょうか?


人もどんな生き物も、この毒を取り込んで浄化する能力を持たないのです。


この仕事ができるのは、時間だけです。


ただただ浄化の日を願います。

取り返しのつかぬ惨禍を人の手で引き起こすことが、もう二度とない様に、私達のすべきことがあると思います。


以上

2011年5月28日
伊藤 晃
菜園「野の扉」 http://nonotobira.typepad.jp/new/

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投稿情報: 2011/05/29 | 個別ページ | トラックバック (0)

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おしらせ~「野良で考えたこと」アップ

福島原発事故以来、晃が考えたことをまとめた文章を、アップしました。

「野良で考えたこと~原発事故以来」

お客様に配布する「菜園たより」とは、別の性格のものですが、「菜園・野の扉」の現在の気持ち、ということで、ここのホームサイトに、半永久的(?)に載せていくことにしました。

ご感想ご意見などありましたら、泰子のやっているブログの方に、お願いします。

あるいは、右サイドバーのお問い合わせフォームからメールを書いていただくようお願いします。

 

投稿情報: 2011/05/29 カテゴリー: 菜園たより(隔週発行) | 個別ページ | トラックバック (0)

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「菜園たより」2011年5月3週号

◆ 野良へ帰る

もう2ヶ月もまじめ一本やりで、ふざけることも少なかったな、と少し反省しています。

人間たるもの、変態くらいは普通ですが、失格!までいうと、おだやかではありません。

でも、たまに、鶏だとか、カメムシくらいに堕ちるのは、よい気分転換で、効用も多分あります。

主眼は何かになることではなくて、去ることです。

脳ミソの爆発などを避ける為には、テレポーテーションで遠く去れれば一番いいです。

例えば、昼寝をしている、「ニャー公」(うちの飼い猫)の中に、そっと忍び込むのは、たまらないアイデアです。

そういえば、今日(5月13日)は、夏日と黄砂という、あまりない取り合わせで、心身ともに遅れ気味です。

仕事全体でいうと、間に合っているのか、遅れているのか、よくわかりません。午前中に遅れを嘆いて、午後にこれでよかったのかな、などという風です。

確実なこともあります。野菜たちの生育が、1週間から10日くらい遅い(暦の上では)ということです。

20110516soramame1

さて、畑に、梅の木が2本あるのですが、毎年、開花が少しだけ、ずれるのです。

今年は、1本目がすっかり終わってしまってから、やっと2本目がぼちぼちという感じで。

結果は歴然としました。つまり1本目は実を結ばず、2本目は鈴なりです。

年に一発勝負の生き物たちは、思案が大変です。

翻って、空模様も前述のように、今何をしようかと、迷っているようにも、場当たり的にも思えてきます。

5月になっても、天地定まらない状態は続いています。(以上 晃)


◆ 町への要望書 提出

遅れてはおりますが、今、野の扉の畑では、1年で一番たくさんの種類の野菜が育っていて、百菜繚乱。私たちは、それらの野菜たちのご機嫌をうかがうので大忙しですが、同じような近隣の生産者15名の連名で、去る17日、「町内の土壌及び農産物への放射能汚染実態調査を早急に行なっていただきたい」という要望書を寄居町町長に、陳情書を町議会議長に宛てて、提出しました。

前回の号外でお伝えしましたが、4月下旬の埼玉県での放射性物質のモニタリング調査で、牧草から暫定許容値を上回る放射性物質が検出されましたし、先週は、神奈川県の生茶で、野菜の暫定基準値を超える放射性物質が検出されたというニュースもあり、野菜たちの源である、畑への汚染の状態が心配されます。農水省が、個々の野菜が土壌から放射性物質を吸い上げる比率(移行係数)を近々発表するらしいので、色々な数字が明らかになりましたら、皆様にお伝えしたいと思っています。

大震災と原発事故で、大きな痛手を負った方々へ直接かける言葉はありませんが、私たちは、この場所で何とか前を向いて、先々に備えて、できることをしていきたいと思っています。

(5月18日 泰子~写真は、15年ぶりくらいで、もしかしたら収穫に至るかもしれない、「ソラマメ」のサヤです)

投稿情報: 2011/05/22 カテゴリー: 菜園たより(隔週発行) | 個別ページ | トラックバック (0)

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「菜園たより」5月1週 号外

5月2日、埼玉県は、「牧草の放射性物質モニタリング調査」において、「4月22日に県内3か所の牧草を採取し、分析を行ったところ、一部の試料で放射性ヨウ素および放射性セシウムの暫定許容値を上回りました。」と発表しました。(県のHPの該当ページ)

具体的な数値などは、下の表をご覧ください。

野菜の調査と異なり、牧草の場合は洗わないで測りますし、牛が大量に摂取するなどの理由から、検出した放射性ヨウ素とセシウムの許容値自体が非常に厳しいものになっていますが、私たちがお届けしている野菜にも関係するニュースであると思い、皆さまへお伝えします。

私たちは、今後の問題は、土壌への放射性物質の影響だと考えます。

埼玉県では、3月29~30日に4地点での土壌を採取して、「農用地土壌中の放射性セシウムの調査」を行なっています。その結果は、原子力災害対策本部が示した土壌中放射性セシウム濃度の上限値を下回っていました。(県のサイトの該当ページ)

しかしながら、この、牧草への許容値を越える放射性物質の影響を踏まえて、県および寄居町に対して、もっと私たちに身近なポイントでの土壌の調査を要請していきたいと思います。そして今後とも、皆さまに経過報告をしていくつもりです。よろしくお願いいたします。(5月6日)


◆牧草の放射性物質モニタリング調査 (※これまで県では、畜産農家に対し、国の指導に基づき、原発事故後(3月11日以降)に収穫した牧草の給与や放牧の自粛を要請しています。)

↓表の単位は、1キロ当たりベクレル(Bq/kg)

野菜の暫定規制値は、ヨウ素2000Bq/kgセシウム500Bq/kg  です。

 

放射性ヨウ素 放射性セシウム
粗飼料中の暫定許容値(乳用牛) 70 300
埼玉県  (4月22日採取) 熊谷市 90 420
鶴ヶ島市 30 230
東秩父村 60 340
福島県  (4月27日採取) 福島市 26 770
田村市 120 2700
相馬市 170 9200
栃木県  (4月27日採取) 那須町 20 910
足利市 90 650
千葉県  (4月21日採取) 八街市 90 350
市原市 230 1110



◆農用地土壌中の放射性セシウムの調査  (採取日 3月29月~30日)

採取地は、すべて埼玉県農林総合研究センター等の管理ほ場

検出された値は乾土1kg当たりのもの

原子力災害対策本部により示された、玄米中の放射性セシウム濃      度が食品衛生法上の暫定規制値(500 Bq/Kg)以下となる、土壌中放射性セシウム濃度の上限値は、1キロ当たり5000ベクレルということです。

採取地域 放射性セシウム
熊谷市 16ベクレル
秩父市 109ベクレル
久喜市 82ベクレル
鶴ヶ島市 検出せず

 

以下は、紙版の「たより」には載せませんでしたが、埼玉県での「過去に実施した放射性物質の農畜産物への影響調査」を表にしてみたものです。参考まで。

(県のサイトの該当ページ)

暫定規制値

検出値

3月20日

3月24日

3月29日

4月5日

4月12日

4月19日

4月26日

5月3日

ホウレンソウ

放射性ヨウ素

2000

最小値

570

710

410

120

45

ND

ND

ND

最大値

1900

1100

530

160

84

ND

ND

ND

放射性セシウム

500

最小値

50

26

58

24

12.1

ND

ND

ND

最大値

173

102

61

32

51

12.6

11.7

ND

小松菜

放射性ヨウ素

2000

最小値

660

240

55

ND

ND

ND

ND

最大値

1000

540

140

ND

ND

ND

ND

放射性セシウム

500

最小値

16.2

26

ND

ND

ND

ND

ND

最大値

32

37

44

5.5

15.2

ND

ND

投稿情報: 2011/05/07 カテゴリー: 菜園たより(隔週発行) | 個別ページ | トラックバック (0)

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「菜園たより」2011年5月1週号


Asupara2011 ■ 過ぎ行く春

年々歳々、時間が経つのが早く感じられますが、このひと月余りは特にあっという間に過ぎてしまって、あぜんとします。

3月から4月にかけて、気温の乱高下や極端な乾燥といった様々な異常天候の中、畑と向き合い野菜セットを維持してきました。5月に近づくにつれ、春野菜も順々に出来てきて、夏野菜も順々に畑に出てきているのですが、ふと気づくと、なんだか、「うわの空」だったりして・・・

震災と津波で被災された方々へは、かける言葉も見つからないまま、そうして今自分たちのできることを普通にやろう、と思ってすごしてきました。しかしながら、原発事故は、別の混沌の中に、自分を連れて行ってしまって、なおさら、言葉を失っています。

 

無理に言葉にすれば、私たちが、農薬と化学肥料を使わず野菜を育てる百姓を選んだこと、そうして生きてきたことに深く関わる「問い」が、今回の原発事故によって、投げかけられた、とでも言いましょうか。色々な情報と一緒にそこのところをぐるぐるするばかりで、みなさまへの「たより」がなかなか書けません。


夫も、今、文章を書いていますが、「たより」に載せるにはあまりふさわしくないかと、私がやっているブログの方に記事として載せたいと思っています。興味のある方は、しばらくしてからのぞいてみてください。本当は、今週も「たより」をお休みしようかと思ったのですが、娘がさし絵を送ってきてくれたのと、以下紹介する素敵な本を入手できたので、出すことにしました。

 


■ 「にっぽんの麺と太陽のごはん」発刊

Hirokohonn
神奈川県葉山在住の白崎裕子さん著 「なつかしくてあたらしい、白崎茶会のオーガニックレシピ2」です。

レシピ本は星の数ほどあるけれど、「泣ける」のは、滅多にない。「今こそ作りましょう。今こそ限られた材料で、限られた道具で、・・・暗闇の中で、太陽の光を感じながら、驚くほどおいしいものを作りましょう。(「おわりに」より)

また、「料理上手になる一番の近道(といっても、3ヶ月かかるが)」という、とっておきの秘けつも公開。どうしたって予約が取れない裕子さんの教室に通えない方も、かゆいところに手が届く親切な指導が盛りだくさんのこの本で腕を上げてください。私としては「無敵の即打ちうどん」だけはマスターしたい。( WAVE出版 1500円+税 )

(アマゾンからは、こちらで ) (5月2日 泰子)

■ お願い

今回の大震災で被災された知人・ご友人で、「野の扉」の野菜を活用してくださる方をご存知でしたら、ご連絡ください。詳細は相談させてください。

 

投稿情報: 2011/05/03 カテゴリー: 菜園たより(隔週発行) | 個別ページ | トラックバック (0)

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「菜園たより」2011年4月3週号

Nira2011 ■ 千年に一度の春

ほぼ1ヶ月の間、遅々として進まなかった季節の移ろいも、ここ数日で、大分追いつきました。

でも、春は、見送られ、そうでなければ、はしょられたようです。

桜花と雑木林の木々の芽吹きが、すごいスピードで同時にやって来て、かすみに煙る里山の美しさは、1日に凝縮し、千年に一度のものか、と思われました。

ただ、春は約束されたものでも、私たちの権利でもない、と思い知らされた、この震災です。そして起こった原発事故。私たちには、春を迎える資格があるのかどうかも疑わしい有様です。

でも、季節を刻むのも、百姓の大事な仕事です。願わくば、いつか、春が来ますように。それも、来年の春に春が来てくれますように。( 晃 )


■ ヘビは起きた

この20年間で一番寒かった3月を過ぎ、先週は、零下から夏日(=25℃以上)までと、またまた気温の乱高下する4月となっています。そして、3週ほど雨が一滴も降っていません。去年の「たより」を見ると、3月は戦後最多の降水量で、4月は夏日もあるけど雪は積もるし霜も降りて、野菜に被害、とありました。

それでも、4月に入れば、今年もツバメがやって来て、去年の巣を修繕して子育てに備えています。数日前には、急に彩りにあふれた里山にある鶏小屋で、「くぬぎの森」の主(?)の、大きなアオダイショウと、出会ってしまいました。

そんなこんなで、畑や出荷場で、いつもどおりの作業をしながら、過ごしているのですが、どうも調子が取れないのは、花粉が猛烈に多いからなのか、余震の余震が毎日のように起こるからなのか、原発事故がどうしたって終息しそうにないからなのでしょうか。


情報にふりまわされて、自分を見失わないように、地に足をつけて、これからも、お天気に振り回される百姓として生きていきたいです。(4月17日 泰子)

~~ニラのさし絵を描いて送ってくれた、仙台の娘のアパートでも、10日ほど前にガスが復旧しました。学校はまだ始まりませんが、学生有志のボランティア組織に登録して、避難所での手伝いなど時々やっているようです~~

 

 

 

投稿情報: 2011/04/20 カテゴリー: 菜園たより(隔週発行) | 個別ページ | トラックバック (0)

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