★小麦
去年のうちの小麦の放射能測定結果については、こちらの記事(「埼玉の怒り」)にあります。
長いので、要約すると、セシウム合計15ベクレル/キロ でした。それで、息子の「ノラのパン」では、その旨お客様にお伝えして、全粒粉仕様(製粉した粉とフスマを混ぜて使う)は中止して、セシウムは半分から3分の1になるであろう、製粉済みの粉のみ使用することになりました。
今年の麦はどうだろう、と、検査料は息子負担(15、000円の検査費用を取り戻すためには、何個パンを売らなくてはならないか、という計算はわたしにはできません)で、調べました(画像中の試料名が2011年産となっているのは、間違いです、2012年産です)。結果は、
定量下限値1.0ベクレル/キロで、それぞれNDでした。もちろんゼロではないです。可能性として、セシウム合計1.999ベクレル/キロとかあるかもしれません。折れ線グラフみたいなものは送られてこないので、「山が見える」かどうかとかわからないので。
注)定量下限値、検出限界値、未検出、などについて、わかりやすい記事がありましたので、参考までに添付します。(株)八進という会社のファイルです。
「検出限界値」 「定量下限値」 「測定下限」についてをダウンロード あと、「横浜市民測定所」さんのデータのページおよび備考欄についての記述が、丁寧で、少しわかったような気になります。
埼玉県の今年の小麦の放射能検査が始まったころ、県のHPをちらりとみて、うちの小麦についても、そんなに出ない(ひとけた)だろうなあ、という予想はしていました。それっきりになっていた(実際に使うのは秋以降だから)のですが、改めて、県のHPの該当ページ(放射性物質の埼玉県産農産物への影響調査結果について)を見てみると、6月29日公表の第95報から9月14日公表の第106報までに、小麦の検査結果が掲載されていました。
その中で、検出限界値(1.6~2.3Bq/kg)をこえて、検出されたのは、嵐山町の一検体のみでした。
セシウム合計5.6ベクレル/キロでした。特別嵐山町が放射能に強く汚染されているはずはないので、どのような条件の圃場だったから検出される値になったのかはわかりませんが、もちろん他の地区の他の検体も「未検出」=ゼロ、ではなく、ほとんど変わらない3~4ベクレル/キロの汚染であっても不思議ではありません。
また、うちの結果を知ってから、小麦の測定値を少し検索したところ、上記の横浜市民測定所さんのデータで、神奈川の小麦から、予想外の値が一つ出ていました。
IB-0712-4
8/2 up 強力粉
(全粒粉) 神奈川県 粉末 137Cs=24.2±5.6 134Cs=15.3±3.7
今考えれば、これは、2011年産の小麦を製粉したものだからということでしょうし、去年産の小麦の汚染は、主に、葉っぱへの直接汚染が原因だったようなので、南方で生育が進んでいた小麦の方が、福島第一原発に近い地域よりおおむね汚染度が高かったことも、思い出します。でも、最初さっと一瞥しただけだった時の印象は、「今年の神奈川の小麦に出ているなあ。なんで、うちのが、1ベクレル以下なんだろう?」というもので、我ながら、あわて物でした。そういうことは、皆さんご承知なんでしょうに。
ちなみに、息子のパン屋では、来年の2月から、今年収穫の自家産小麦を使うようです。今年は雹(ひょう)害があって、例年の半分くらいまで収量が落ちました。11月に蒔いた来年収穫の小麦は、播種が遅れた上にこの急激な寒さで、ずいぶんと生育が遅れています。今後、「道楽」の小麦生産を続けて行けるのか、地元のJA製粉所の職員が確保できなくなりそうだし、先行きは明るいものとはいえません。
★野菜
3月の「菜園たより」に、取引先の自然食品店「輪屋」さんが測ってくれた話を書きました。下限値がそんなに低くないですが、5ベクレル/キロ以下、ということでした。→3月2週号
その時、こちらの個人ブログに書こうと思っていたのは、放射性物質の畑の土壌から野菜への移行率のことでした。
私たちのような、多品目少量生産の作り手では、すべての野菜について「はかる」ことは不可能に近く、近くの産地での測定結果から「おしはかる」ことしかできません。それで、昨夏以降、野菜の汚染度としては、ひとけた以下かな、という感触でやっていました。そして、土壌の汚染度がわかって、野菜への移行率がわかれば、予想の確実さも増すだろうと思って、移行率についての資料を探しました。事故後農水省が出した3・11以前のデータは、満足できるものではありませんでしたので。
見つけたのは、◎福島県農業総合センター に集められた資料です。私が閲覧した資料の一覧のファイルを添付します。
福島県農業総合センターをダウンロード
この中の研究成果として、「野菜類が土壌から吸収する放射性セシウムは極めて少なく、移行係数も小さい値であった」ということがあり、移行率は、最大例のサツマイモで0.58%。最少例は、白菜の0.002%でした。
近所の仲間が測った、畑の土のセシウムが、昨年秋段階で130ベクレル/キロ。他の検査結果からも、この近辺では、おおざっぱにいって、100~200ベクレル/キロと思われ、したがって、野菜の汚染は、1ベクレル以下であろう、ということが「おしはかる」ことができます。
やはり近所の仲間が、卵の出荷先の「大地の会」で、今年の6月にキャベツと小松菜の外葉(採卵鶏の緑エサとなる)を検査したら、両方とも1ベクレル以下の不検出だったということもありました。
ただ、ゼロではないですし、また、100~200ベクレル/キロの土ほこりを常に吸引しつつ、地べたに這いつくばって、私たちは仕事をしているわけです。そのことへの不安は、もっと強く汚染された土地で生きる人たちへの想像力をかきたてるものではないでしょうか。(原発ステテコォ、であります)
★ 空間線量
去年の秋、近所の先輩所有の高額測定器を借りて、自宅や畑を測りました。その時の最大値は、自宅敷地内の平屋の物置の雨どい下のくぼ地地表面で測定された、0.8マイクロシーベルト/時。畑では、ビニールハウスの角で、0.4マイクロシーベルト/時が最大。
1年後の推移をみるために、12月になってから再測定したところ、0.8→0.4くらい、0.4→0.2くらいと、ほぼ半減していました。今回、家の中を測ったら、0.08マイクロシーベルト/時あって驚きました。掃除機かけても、板の間でもそれほど減らず、畑の中では、0.03マイクロシーベルト/時前後でしたので、耕うんしている畑より、家の中の方が「危ない」のだと思いました。(拭き掃除などほとんどしないし、夏場は開けっ放しだし、冬だって北側の大きな畑から隙間風が入るのだろうし、とほほ)
また、前日刈払った雑草やしの竹を燃やした後の灰に直置きしてみましたが、0.04マイクロシーベルト/時ほどで、予想したような高い値にはなりませんでした。先輩によれば、事故当時生えていた樹木を燃やした灰だとずいぶんと高い値が出るそうです。森林への汚染の結果、広範な地域での(長野や山梨、静岡など)野生キノコや野生動物の肉への深刻な汚染があることは、この間の測定結果から明らかではありますが、やりきれないです。
長々とまとまりのない文章をつづってきましたが、最後に、東京新聞に、作家の津島佑子さんが書いていた記事を載せます。クリックしてぜひ読んでみてください。
「人情」ではなく「人間としての倫理」を求めることを、地道にやっていく。それを未来につないで。
ちなみに、「菜園たより」第2週号は、ここにあります。見出しは、「寒さは“気”から? / 埼玉最寒の地、寄居 / 馬と一緒に踊りました」です。今日25日の寄居町は、マイナス8度越え、埼玉最寒です。
先週から、お客様への最終便に同封している、今年最後の「たより」は、近々アップします。晃の短い文章です。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
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